<シリーズ・民の知恵>遠隔服薬指導の盲点

 昨年、兄が大病をして、以来定期的に通院している。処方してもらう頓服の降圧薬が珍しい低用量のものらしく、門前薬局にも在庫がないため、毎度、取り寄せてもらった薬を郵便で送ってもらっているそうだ。


 先月、その後日届くはずの薬が届かないので薬局に問い合わせたところ、「●日に発送済みです」と言われたという。兄は結局、もの忘れの激しい同居の母が届いた封筒をしまい込んでしまったのだろうと解釈してあきらめ、今月の受診日まで頓服薬なしに過ごしたらしい。


 そんなこととはツユ知らず、軽い気持ちで最近の体調を尋ねたところ、「ようやく頓服薬を受け取れたよ。少し多めに処方してもらった」と言うので、ビックリ仰天した。言われた医師も、さぞ驚いたことだろう。


 1錠の薬価が6.4円という激安の薬だし、それがなければすぐ大変なことになるというようなものでもないので、大げさに騒ぐ必要はないにせよ、薬に対して支払われた医療費が何の役にも立たず空費されたことは確かだ。患者に安心感を与えることすらできなかったのだから、残薬よりタチが悪い。


 兄は母のせいにして納得しているが、本当にそうなのか。理論的には、郵便が届いてないという可能性だって考えられる。聞き分けの悪い患者だったら、「送った」「届いてない」の水掛け論になって大変なことだろう。地方厚生局へ苦情を言われるかもしれないリスクを考えたら、薬局は再送させられる羽目になったかもしれない。もっと想像力を逞しくすれば、薬局の足元を見て、薬の二重取りを謀る輩が出現しないとも限らない。


 普通郵便で送るという仕組みにしている時点で、薬局は送ったという証明をあきらめていることになる。届かないし追跡もできないという事故を防ぎようがない。薬価を考えれば余計な送料をかけられないのも理解できるが、システムの担保を郵便という外部に完全に委ねているのはマズいと思う。


 それで気になったのが、2020年度にも全面解禁になるという報道がある遠隔服薬指導だ。


 薬剤師がどれだけ丁寧に薬の説明をしようが、肝心の薬が患者の元へと届かなかったら、何にもならない。薬が届かなかったために事故が起きたなどと訴えられるリスクも考えられる。発生し得る賠償額を考えたら、受け取ったというサインをもらえる書留にするか、民間事業者提供の同様のサービスを使うしかない。受け取り時に在宅しなければならなくなるので、患者から見た遠隔服薬指導のメリットがかなり損なわれる。


 さらに運輸事業者の収益が厳しく、慢性的なドライバー不足に陥っているという話をよく聞くので、既存サービスの価格が今の水準のまま維持されると決めつけていると痛い目に遭う可能性もある。


 課題はかなり明確で、知恵の絞り所かもしれない。


川口恭(ロハス・メディカル編集発行人)

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