〔鵜の目鷹の目〕「戦後最長の景気回復」の実態

 政府は1月の月例経済報告で我が国の景気拡大は第2次安倍内閣がスタートした2012年12月以来、6年2ヵ月に及び、リーマンショックまでの「いざなみ景気」を抜き、戦後最長の景気になったと発表した。新聞各紙は戦後最長の景気拡大でも「可処分所得が増えない、消費は伸びていない、景気回復の実感がない」と書き連ねた。


 景気判断の基礎になる経済統計が実際にはいい加減に行われたことが発覚したことで戦後最長かどうかは少々怪しくなったが、それでも企業の景気は拡大を続けたことは確かだ。企業(金融業と保険業を除く)の内部留保は輸出企業中心だが、過去最高の446兆円に上っている。第2次安倍内閣が発足してからでは164兆円の増加である。税収も安倍首相の答弁では「第2次安倍内閣発足以来26兆円も増えた」と強調している。法人税率は29%だから、企業の収益は毎年、ざっと89兆円の収入増になった計算である。


 一方、日銀の国債購入は昨年11月末で418兆円を超える。第2次安倍内閣発足以来、黒田日銀はアベノミクスの1本目の矢である金融緩和に合わせて年間80兆円の国債購入を行い、超低金利政策をとってきたからだ。最近は国債が少なくなり日銀の購入額は予定の半分の40兆円になってきているが、第2次安倍内閣発足以来だけでも日銀の国債購入額は200兆円を超える。


 輸出入はほとんどがドルベースで行われる。が、輸出数量、ドルベースの輸出額はそれほど伸びていない。ということは、円安に基づき日銀券だけが盛んに発行されているだけである。ドル表示ではなく、円表示で発表されるから経済全体がよくなったように錯覚するのである。要は日銀がばら撒いたお金が企業の内部留保になり、税収増になっているということだ。景気回復の実感がないというのも当然である。輸出企業は円安で儲かり、円安で消費者が不利益を被っているという構図になっているからだ。


 経済理論上、GDPは何もしなくても多少の拡大をするから、消費が伸びて2%以上の経済成長がなければ、景気回復の実感はない。むしろ、先進国では通貨安は消費を落とす。わかりやすい例でいえば、かぼちゃはメキシコやニュージーランドから輸入されているが、そのかぼちゃは1ドル=90円のときには100グラム20円でスーパーの店頭に並ぶが、1ドル=110円になると100グラム25円に値上げして売られる。しかし、かぼちゃは生鮮食品だから消費統計に反映されない。つまり、基礎的食品などが値上がりするため、衣類や旅行などの消費に回す余裕がなくなり消費が伸びないのである。


 加えて年金や保険料などの税金が上がるから嫌でも可処分所得が減少し、消費は伸びず、当然、GDPが増えないという円安政策のマイナス影響が出る。結果、一般消費者の生活はますます苦しくなるのだ。景気回復の実感がないのも当然で、これが「戦後最長の景気回復」の中身である。(常)

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