『週刊誌のツボ』 ★“猫も杓子も”の終活記事

 総合週刊誌の“老人向け実用雑誌化”はポストと現代を筆頭に、最近は各誌に共通するトレンドだが、先週から今週にかけ一気に広がった“新ブーム”が、遺産相続などをめぐる“終活特集”だ。相続節税のノウハウなど“裏技”を紹介するものではなく、自分の死、あるいは親の死に伴う一般的な諸手続きについて、備忘録的に要点をまとめているだけの安直な特集である。


 実際、目の前にそうした事態が差し迫った状況なら、こうした“備忘録特集”も便利は便利だろう。それにしても、今週の各誌特集はあまりに似たり寄ったりで、「なんだかなぁ」という思いを禁じ得ないのだ。それほどに各誌、企画案が枯渇してしまっているのか。


 例えば、前号に引き続き巻頭大特集を組んだ現代は『大反響 全国民必読 老親も、あなたも死んでからでは遅い』。ライバル誌のポストは『親が「死ぬ前」「死んだ後」に必要な29の手続き どこよりも親切・丁寧な総まとめカレンダー』。週刊朝日も『困る前に整える死後の手続き』、サンデー毎日も『決定版 相続で間違わないための「丸わかりガイド」』。さらにはあの週刊文春さえ、『これで安心!決定版 「死後の手続き」二大マニュアル 「行くべき場所と必要物」&記入式「親に聞いておくこと」』という具合なのである。


 いかに“猫も杓子も”な状況になっているかがわかるだろう。文春特集には、切り取り線のついた表裏2ページの『記入式「親に聞いておくこと」』という書き込み用紙までついていて、「葬儀会社の社名」「電話番号」「遺影 あり なし」「保存場所」「撮影予定日」……と細々したチェックリストが並んでいるのである。


 もちろん、こうした実用記事を頭から否定する気はない。喜ぶ読者もいるのだろう。だが、ここまでの横並びになってしまうと、あまりにも異様だ。それこそ、雑誌文化が滅びゆく“終活”の風景を見るようで、もの悲しい気持ちになってしまう。


 今週、ただひとつこの企画に手を出さなかったのが、週刊新潮(来週はどうなるかわからない)だが、この雑誌には別の意味で“もの悲しさ”を感じる。今週号でいえば、『全豪優勝に冷や水! 「大坂なおみ」色白アニメに怒った人々』という記事だ。彼女のスポンサー日清の商品PR動画で、大阪選手の肌が白人のように真っ白に描かれ、多くの海外メディアから人種的偏見を批判された問題を取り上げている。


 いかにも新潮らしいタイトルで、あたかも日清を批判した側の「正義感ヅラ」「偽善者ぶり」に“逆襲”する記事かと思いきや、記事内容はごく普通に日清の不手際を報じているだけだ。唯一“新潮らしい文章”は、記事冒頭、大坂選手にアイデンティティーについて質問した記者について、《彼女が自身のアイデンティティーについて煩悶したことがあってほしい……質問した記者はそんなことを望んだのかもしれない》と、言いがかりめいた邪推・悪態を綴ったくだりだけだ(記者の質問はごく常識的なものだった)。


 固定読者向けに“人権派ぎらい”“正論ぎらい”を売りにする商法はわかるのだが、この記事ではそのためのファクトが何も取材できていない。“いやらしい新潮節”が大好きな読者には肩透かしのしょぼい内容になっているし、そうでない読者には陰湿さへの嫌悪感を残すだけだ。誰も喜ばないこんな書き方をするくらいなら、あっさりと普通に書けばいいものを、と思うのだが、たとえ羊頭狗肉の記事になってしまっても、あくまでも陰湿さを貫くのは、減り続ける固定読者を逃すまい、と願う執着心からのことなのだろうか。そんなふうに、こちらもつい“邪推”してしまうのだ。


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三山喬(みやまたかし) 1961年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。98年まで13年間、朝日新聞記者として東京本社学芸部、社会部などに在籍。ドミニカ移民の訴訟問題を取材したことを機に移民や日系人に興味を持ち、退社してペルーのリマに移住。南米在住のフリージャーナリストとして活躍した。07年に帰国後はテーマを広げて取材・執筆活動を続け、各紙誌に記事を発表している。著書は『ホームレス歌人のいた冬』『さまよえる町・フクシマ爆心地の「こころの声」を追って』(ともに東海教育研究所刊)など。最新刊に沖縄県民の潜在意識を探った『国権と島と涙』(朝日新聞出版)がある。

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