〔鵜の目鷹の目〕フランスという面倒な国

 カルロス・ゴ―ン会長の逮捕から始まったルノーと日産自動車の経営を巡る軋轢が相変わらずゴタゴタしている。ルノーの大株主であるフランス政府の意向から経営統合を求めるルノーと、儲けをみんな持って行かれてしまうと思う日産側の不満の対立がある。そこにフィアット・クライスラー(FCA)とルノーの経営統合が持ち上がったから、騒ぎはさらに高まった。しかし、統合話を持ちかけたFCAがフランス政府の態度を不満として経営統合計画を撤回。ルノーとFCAの統合計画は破談になったかと思うと、復活したりしている。


 もっとも、欧米企業の間では撤回したと言っても水面下で条件を引っ込めたり、別の条件を出したりするのがふつうだ。それだけに、少々、失礼だが、見ている方はいろんな要素が加わって面白い。


 しかし、日本のマスコミはルノー・日産グループとFCAが加わると、生産台数が世界一になると大報道に明け暮れた。相変わらず、どこぞの経済紙と同じで、両社の生産台数を足した数字を有り難がっているのは滑稽だ。


 ところが、「生産台数、世界一」と浮かれるマスコミと違って、経営統合に巻き込まれる日産の方は有難迷惑のテイだ。それはそうだろう。日産の立場はルノーともFCAとも違う。今、自動車はハイブリッド自動車、電気自動車、さらに自動運転、安全運転車などの技術開発競争が始まっている。加えて、ヨーロッパではディーゼルエンジンのPM2・5排出が問題になっている。


 こうしたなかでルノー、FCA、日産の立ち位置を見れば、それぞれの思惑がわかる。ルノーは電気自動車の技術もハイブリッドの技術でも遅れている。ただ、マクロン大統領が雇用拡大のためにルノーと日産の経営統合を進め、ルノーの工場で日産車の製造を増やしたいという意向だ。


 FCAの前身のクライスラーはリー・アイアコッカがCEOだった時代には安いトラックの車台を使ったワンボックスカーやピックアップトラックでブームをつくったこともあるが、その後は衰退一路。イタリアのフィアットと経営統合して経営再建したが、秀でた技術もなければ、一世を風靡するような車を登場させたこともない。


 一方のフィアットもたびたび経営破綻の危機に見舞われ、その都度、政府の支援を受けたりして再建を果たしてきたメーカーだ。当然、FCAになった後もルノー同様、ハイブリッドの技術も電気自動車の技術でも遅れている。だが、日産は30年以上前に電気自動車をつくった経験があるし、今ではハイブリッドの技術も持った。ルノーもFCAも日産の技術が欲しいから経営統合を持ちかけただけである。


 狙われた日産にとってはルノーとの経営統合も、ルノーとFCAとの経営統合もさほどメリットがあるわけではない。日産の幹部によれば「ルノーが日産に出資した4000億円の2倍、いや3倍以上の金額を高配当して支払ってきた。もうたくさんだ、という気持ち」になるのも無理はない。ルノーがFCAと経営統合するならルノーが持つ日産株の比率を低くしてくれ、と条件を出す気持ちも理解できる。いつまでのルノーの奴隷でいたくないという気持ちだろう。


 だが、フランスという国は意外に保守的というか、手にしたものは離したがらない。第2次大戦後、北アフリカの植民地の独立を認めようとしなかった。アルジェリアの首都、アルジェで起こった大規模デモは映画にもなったが、ついに認めるしかないとなったときでさえ、北アフリカに駐留する海外部隊が徹底的に反対し、クーデターが起こるかと思われた。そのとき、ド・ゴールが大統領に担ぎ出され、騒動は鎮静化。ようやくアルジェリアの独立を認めた。


 ベトナムでも同様だった。第2次大戦後、再びベトナムを植民地にし、ホー・チミン率いるベトナム共産党と戦い、ディエンビエンフーで大敗するまで独立を認めなかった。世界に冠たるフランス文化とは似つかわしくないことを平気で行うところがある。


 日産もさぞ大変だろう。(常)

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