<シリーズ・民の知恵>お坊さんが広げる「子どもの貧困」支援の新しい形(前編)

 子どもの7人に1人が貧困(2015年厚生労働省国民生活基礎調査)という「子どもの貧困」問題を支援しようと、新しい活動の形が広がっている。お寺に溢れるお菓子や果物などのお供え物を、困窮するひとり親家庭に「おすそ分け」として届けるお坊さんたちの活動「おてらおやつクラブ」だ。自身がひとり親家庭で育った経験もある安養寺(奈良県磯城郡)の松島靖朗住職が発案した。

■お供え物を貧困の子どもたちへ


「自分がお寺で働き始めた頃から、食べきれないほどたくさんのお供え物があるのが、ずっと気になっていました」(松島住職)。お寺には、お盆やお彼岸、お歳暮やお中元などで多くのお供え物が届く。一般的には「おすそ分け」として訪問客や地域住民に配られたり、住職の家族が食べたりするが、とくに多い時期には処理し切れないこともあるという。


 そんな折、大阪市内で母子の餓死事件(※)が起こった。松島住職は「同じ関西で餓死する人がいるなんて……」と大きなショックを受けた一方、自身の周りにはお供え物が溢れていた。「お寺にはあり過ぎるのに、社会にはないところがあって大変なことになっている。これをつなげれば、どちらもが解決できるんじゃないか」と、お寺からお供え物をひとり親家庭に送るという活動を思い立った。


 しかし、子どもの貧困問題の支援に門外漢の自分の発案が、世間に受け入れられるのかわからなかった。そこで、大阪市内で子ども食堂や家庭訪問活動などを行う子どもの貧困の支援団体CPAO(Child Poverty Action Osaka:しーぱお)の徳丸ゆき子理事長に相談したところ、活動の必要性に確信を得た。まずは安養寺からひとり親家庭にお供え物を送り始め、翌年からはインターネットやSNSを通じて他のお寺にも呼びかけ、「おてらおやつクラブ」として、宗派を超えた全国的な活動に広げていった。


■毎月9000人の子どもにおやつ提供


 現在、「おてらおやつクラブ」に参加しているのは国内47都道府県の1020寺院にのぼる。お寺が直接家庭にお供え物を送るのではなく、社会福祉協議会や児童養護施設、こども食堂、DVシェルターなどひとり親家庭や子どもの貧困に関する支援団体などに送っている。

お供え物を詰めるお坊さんたち(おてらおやつクラブ提供)


 各お寺と送付先のマッチングは安養寺内の事務局が担っている。団体によってお供え物の活用方法はさまざまで、ひとり親家庭への宅配、こども食堂ではおやつとして提供、窓口に来た人に直接手渡している社協もある。松島住職は「自分たちは支援のプロではないので、あくまで後方支援でいたい。活用の仕方は支援団体の方々にお任せしています」と話す。お供え物の詰められた段ボール箱が国内の寺院から毎月約400~500個発送され、404の支援団体に届けられている。毎月9000人以上の子どもたちが「おてらおやつクラブ」からの品を受け取っている(数字はすべて2019年1月1日現在)。


 活動開始後は、地域住民からレトルト食品や缶詰、洗剤、衣服、タオル、新学期の前には文房具など、「おすそ分け」を前提にしたお供え物が増えた。CPAOにも毎月2~3箱のお供え物が届く。CPAOでは週3回子ども食堂を開いており、食後のおやつにお供え物が出されることもある。

お供え物を受け取る子ども達(CPAO提供)

子ども達に届けられたゼリー(CPAO提供)


「おやつは子どもたちにとっての喜びです。おやつ以外にも、季節を意識してハロウィンの飾りが届いたり、冬にはフリースのひざ掛け、縄跳びなどのおもちゃもいただいています」と徳丸氏。食堂用に、お米や砂糖、塩などの調味料なども届く。(熊田梨恵)


(※)大阪の母子餓死事件…2013年5月、大阪市内北区のマンションで母親(当時28歳)と長男(3歳)の遺体が見つかり、「最後におなかいっぱい食べさせされなくて、ごめんね」というメモが残されていた事件。

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