京都・処方取り違え事案が薬剤師に突き付けたもの

 弊社の日刊紙「RISFAX」で、6月25日、7月1日と、2度に渡り、京都市内で2月に起きた処方内容の取り違え事案について報じた。

 現地取材や関係者への聞き込み取材などを起点に、ドラッグストアの作成した調剤過誤報告書も確認したうえで、記事を書いた。読者からの反響はもちろん、会員外の方々もRISFAXの見出しや断片的な情報をもとに、SNSなどに意見を書き込んでくれている。


 薬剤師から届いた声はさまざまだ。


「薬に関するミスは患者の命に関わる。だから薬局があり、医療機関の処方を、事務的なミスだけでなく、内容が適正かも含めてチェックする。その徹底が必要だと再確認した。不正請求などとは次元の違う重い事案だ」(神奈川県・50歳代薬局経営者)


「ゾッとした。とんでもないミスが日常的に起こり得るということ。調剤薬局だろうが、ドラッグストアだろうが、医療用薬だろうが、OTC薬だろうが関係ない。薬剤師が関わったのであれば、ミスのチェックを含めて患者にとっての最適解に導くのが責任だと考えなければならない」(東京都・30歳代勤務薬剤師)


 といったコメントもあれば、


「まったく違う内容の処方箋を出してしまったことに気づかない医療機関がどう考えてもおかしい。処方内容がガラっと変わるケースは稀にあり、薬局も不注意があったのかもしれないが、薬局を中心に批判を展開するのは間違っている」(大阪府・40歳代管理薬剤師)


「医師が薬剤師の疑義照会に耳を貸すような環境にあったのか。薬剤師から『処方内容がこれまでと全然違う』と聞かれた患者家族も耳を貸さずに薬剤師を急かしている。医師への強固な指摘は『処方権の侵害』と言われるなどトラブルになり得るし、患者に薬を出さないのもクレームにつながる。薬剤師に何ができたと言うのか」(埼玉県・50歳代管理薬剤師)


 と、薬局を中心に取り上げた今回の報道に対する批判や不満の声も聞かれた。


 もちろん、誤った処方箋を出した医療機関側の責任は大前提と捉えており、その点も記事内では触れた。それでも、薬局や医薬分業を取材する業界紙記者として、薬局側で起きた出来事や、処方内容が全然違うと気づきながらチェック機能が果たせなかった経緯を精緻に報じる意義がある。そう考えた。


 薬剤師は偉い――。幼稚な言い回しで恐縮だが、筆者は取材するうえで、常にそう意識するようにしている。それだけ、薬剤師法24条の一文は重い。


「薬剤師は、処方箋中に疑わしい点があるときは、その処方箋を交付した医師、歯科医師または獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない」


 薬物療法を「止める」権限をもち、義務を背負う薬剤師は“偉い”はずだ。医師の調剤を例外的に認める医師法22条や薬剤師法19条の「但し書き」がある以上は、「医師に対して薬剤師が強く出られない」といった声も聞くが、実際に医師や患者から信頼され、意見が尊重されている薬剤師もいる。むしろ、業界紙記者という立場では、そうした薬剤師の前向きな取り組みを聞く機会も少なくはない。


 だが、国が医薬分業に本格的に舵を切り始めた74年から45年を経て、分業率が70%超に達しても、医師から「口を出すな」と突っぱねられ、患者からは「早くしろ」と急かされる実態もある。理解されていないし、理解させていない。薬剤師自身が、その状況を無意識に受け入れてしまっている側面さえ、垣間見える。


 そんななか、患者が亡くなる重大な事案が起きた。あってはならないことだが、取材すれば取材するほど、ほかの地域、施設でも起き得るという危機感を強めた。


「この問題は『医療機関のミス』で済ますべきではない。そして、薬剤師はもちろん、医師、患者もこの事案を知り、医薬分業の意義やあり方を考える契機にすべきではないか」


 取材に協力してくれた複数の関係者の想いだ。


 雑誌「医薬経済」の7月15日号では、こうした切り口も踏まえ、ココカラの調剤過誤報告書の内容をさらに細部まで掘り下げ、報じている。ぜひとも、ご一読いただきたい。 (槇ヶ垰)

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